大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)60号 判決

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨および本件審決理由の要点が、いずれも原告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。

二 また、第一引用例および第二引用例に本件審決認定のような各技術事項の記載があり、したがつて、本願発明の構成要件のうち、共振回路に被測定インピーダンスを挿入してインピーダンスを測定することは第一引用例に、半導体結晶に電極を容量結合して非接触的に半導体の特性を測定することは第二引用例に、それぞれ記載されていること、一方、共振回路の共振を完全ならしめるために可変容量を調整することが電気の技術分野における慣用技術であること、以上の事実はすべて原告の認めて争わないところである。

ところで、原告は、半導体特性の測定に関する容量結合法において測定周波数を三〇メガサイクル以上に選ぶことは、本願出願当時においては、いわゆる表皮効果の影響をおそれて躊躇されていたにかかわらず、本願発明は三〇メガサイクル以上の高周波の使用が可能であることを解明して、三〇メガサイクル以上の周波数を使用した従来法に比し特段の効果を奏するにいたつた旨主張するが、理由がない。すなわち、第一引用例に、共振回路に被測定インピーダンスを挿入してインピーダンスを測定する際にVHFにおいての測定上の誤差などについて記載されていることも、原告の認めて争わないところであり、一方、VHFとは、三〇ないし三〇〇メガサイクルの周波数を指すことが技術常識であることは、当事者間に争いがない事実である。したがつて、第一引用例には、未知抵抗の測定に三〇メガサイクル以上の周波数を使用することが開示されていることになるから、第二引用例記載のような容量結合法による半導体特性の測定に際し、当業者が三〇メガサイクル以上の周波数において測定を試みることは、これを妨げるべき特段の技術的障害事由が認められない限り、経験則上当然のことといわなければならない。この点について、原告は、第二引用例には容量結合による半導体特性の測定を五〇キロサイクルという低い周波数で行なうことのほか、一〇メガサイクル程度の高い周波数を用いることは好ましくない旨の記載があり、それは表皮効果の影響をおそれたためである旨主張するが、成立に争いのない甲第一一号証の一、二(第二引用例)によると、「容量結合によれば五〇キロサイクルという低周波を使用することが可能であるが、最良の結果は一メガサイクル附近で得られる」旨の記載があるだけで、容量結合法において一〇メガサイクル程度の高周波を用いることが好ましくない旨の記載などはないことを認めることができこの記載によれば、測定の目的に応じて良好な結果を得るためには、五〇キロサイクルよりは一段と高い周波数を選択すべきものであることを窺知することができる。のみならず、本願発明が容量結合法による半導体特性の測定において三〇メガサイクル以上の周波数を採用するについて、表皮効果の除去またはその影響を免れることを可能にするための技術手段を解明したわけのものでないことは、原告の主張自体で明らかである。その上、三〇メガサイクル以上の高周波を使用することを困難ならしめる技術的障害事由があることを窺うに足りる資料は、存在しない。したがつて、本願発明において三〇メガサイクル以上の高周波を用いることとした点は、単に、技術的に本来可能であつたことを試みたにすぎないものというべきである。それ故、本願発明において三〇メガサイクル以上の高周波を採用したことにより得られたとする原告主張の特段の効果なるものは、第一引用例において示唆されている、抵抗の測定において三〇メガサイクル以上の高周波を使用することを、第二引用例記載の容量結合法に適用したことにともなう当然の効果であつて、予測可能な範囲を出るものではないといわなければならない。

以上の理由により、第一引用例および第二引用例の各記載事項から本願発明を容易に推考しうるとした本件審決の認定判断は正当であり、原告主張のような違法がないことは明らかである。

三 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は失当であるから棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本願発明の要旨

三〇MC以上の周波数において動作し、半導体試料と容量的に接触する電極によつて共振回路と結合せられ共振を完全ならしむるときには可変容量の調整によつて行われることを特徴とする半導体特性測定装置。

本件審決理由の要点

本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。一方、昭和三一年一一月三〇日特許庁資料館受入れの無線従事者教育協会発行、川上正光外三名翻訳の「エレクトロニクスの測定」上巻一〇九頁ないし一一二頁(以下「第一引用例」という。)には、被測定インピーダンスを共振回路と結合し、共振状態にするために可変容量の調整をすることおよびVHFにおいての測定上の誤差などについて記載されており、また、昭和三四年一月一九日特許庁資料館受入れの「ジヤーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサイエテイ」一〇五巻二五一C(以下「第二引用例」という。)には、帯域精製したシリコン結晶の抵抗とライフ・タイムを容量結合を使用し、非接触的にブリツジまたはQメーターで測定することが記載されている。

そこで、本願発明と第一引用例および第二引用例記載のものとを比較検討すると、本願発明の構成要件の同調回路に被測定インピーダンスを挿入してインピーダンスを測定することは第一引用例に記載されており、また、半導体結晶に電極を容量結合し、非接触的に半導体の特性を測定することが第二引用例に記載されている。そして、測定周波数を三〇MC以上に選ぶことは、第一引用例においてもVHFで測定する場合の記載があるから、当業者が必要に応じて容易に実施し得る程度のことであり、また共振回路の共振を完全ならしめるために可変容量を調整することも、第一引用例に記載されているように、電気の技術分野における慣用技術であつて、これらの点に発明を認めることはできない。したがつて、本願発明は第一引用例および第二引用例の各記載から容易に推考できるものと認められ、旧特許法(大正一〇年法律第九六号)第一条の発明に該当しないから特許すべきものではない。

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